2013年4月2日火曜日
























『あなたにしか当てられない曲名』




手が離せないんだよ




手が離せないんだよって、

あなたは泣きそうになりながら私に言った。

それが、私たちの最後の会話だった。





その日、私たちは手を繋いでいた。

あえてそんなふうにして、二人で自分たちをいじめながら歩いた。

冬だった。

繋いでいる方の手は信じられないくらい暖かかった。

別れると決めていた日。


都内の、お洒落でもなんでもない

本当にどうでもいいところで





あなたと付き合うことになる前

実は私は知っていたんだよ。

よく世間で言われるやつ、

う し な っ て か ら 大 切 さ に 気 付 く


ドラマでも散々見てきたし、

私だって少ないけど、身に覚えがないわけでもなかった。

だから次に人と付き合うことになったらさ、

どうせ失うまで気付けないんだ私はバカだからまた。

って言い聞かせていようって、

そのことわかってて付き合えば、そんなのたいしたことないって

そんなことを考えていた。



別れた後に大切さに気付く予定だったのに、

あなたはその一歩手前で格好悪くごねた。

手が離せないんだよと言って、

泣きそうな顔で、

おもちゃ売り場を離れたくない子供みたいに。

だいたい 手が離せないって、こういう時に使う言葉じゃないだろって、

もうわけわかんなくなってんじゃんって思った。


ダサくて、

泣き出しそうな顔は本当に不細工で、

情けなくていくぢない。


本当にあなたらしくて

つい笑ってしまいそうになったのに、   私は、泣いていた。


理解するのに少し時間がかかった


戸惑っているうちに、可笑しくなってきてよけいに泣いた


たしかに、


こりゃ手が離せないくらい心の中が忙しいな私も。って


くだらないこと考えながら泣いた。


とまらなかった


とまらなくたっていいと思った




雪が降るわけでもない

綺麗な噴水の前でもない

美男でも、美女でもない

みっともなくて、恥ずかしいドラマみたいになっていたはずだね



その後どうやって別れたのかは覚えていない

あなたのあのダサい台詞が最後の会話だったのかも、本当は覚えていなくて、

ふと気付いたら今。みたいに

手を繋いだまま 真っ暗になって

CMにいくテレビドラマみたいだなと思ったからさ

エンディングテーマをこさえようと思って、

ふたりが好きだったあのバンドの曲を口笛でやってみるんだけど、

ふい ふい って。 鳴ってるんだか鳴ってないんだかわからないくらいだよ。

ダサいドラマにはピッタリじゃんね


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